糖尿病について
血液にはブドウ糖が含まれていて、脳を含む全身のエネルギー源になっています。血糖値が上がりすぎないようコントロールしているインスリンというホルモンが不足、または十分な効果を発揮できなくなると高血糖が続き、糖尿病を発症します、糖尿病は、動脈や毛細血管を含む全身の血管にダメージが蓄積して深刻ないくつもの合併症を起こします。高血糖で動脈に負担がかかると動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクが上昇します。また、毛細血管がダメージを受けると、失明につながることがある糖尿病網膜症、腎不全から透析が必要になる糖尿病腎症、潰瘍が悪化して足が壊死し切断に至ることもある糖尿病神経障害などの合併症を起こすこともあります。
また高血糖は全身の細胞を糖化させますし、過剰なインスリンが分泌されてインスリン血症を発症すると高血圧などの発症リスクも上昇します。
早期の糖尿病は自覚症状に乏しいため、健康診断などで高血糖を指摘されたらできるだけ早く受診して適切な治療をはじめることで、こうした合併症を防ぐことも可能になります。早期治療では、ちょっとした生活習慣の見直しなどでも高い効果を期待できますので、早めに受診してください。また、高血圧や脂質異常症(高脂血症)は同じ生活習慣の乱れによって発症するため合併することが多く、合併した場合はそれぞれの検査結果がそれほど悪くなくても動脈硬化の進行が早まってしまいます。特に内臓脂肪型肥満があるメタボリックシンドロームでは動脈硬化が進行しやすいため注意が必要です。
増加している糖尿病罹患者数
2016年に行われた国民健康・栄養調査では、HbA1c6.5%以上で糖尿病が強く疑われる方が日本人全体の12.1%にもなることが報告されています。男性だけに限った場合には16.3%とされていて、女性は9.3%です。糖尿病患者数は増加傾向にありますので、健康診断などで血糖値やHbA1cの数値が気になる場合には早めにご相談ください。
糖尿病の検査と治療
進行するまで自覚症状に乏しいため、健康診断の血糖値やHbA1cの数値が悪化傾向にある場合には早めの受診をおすすめしています。早期に適切な生活習慣の改善を行うことで、楽に状態を改善することができますし、予防目的でしたら無理のない改善でも発症予防につながることが多くなっています。
糖尿病治療の基本は、食事療法や運動療法ですが、続けることが重要ですから、当院では無理なくできる範囲からスタートすることをおすすめしています。血糖値や体調、ライフスタイルなどによって適した内容が異なりますので、しっかりお話をうかがった上で相談しながら治療方針を決めています。また薬物療法が必要な場合でも、さまざまな薬剤がありますので、きめ細かく合わせた処方を行っています。血糖値をしっかりコントロールして、良好な状態をキープしていきましょう。
検査と診断
早期発見のためには、精度の低い尿検査ではなく血液検査が必要です。血糖値は直前の食事などに大きく影響を受けますので、食事のタイミングなどに合わせたいくつかの検査があります。また、検査前の長期的な血糖値の変化を反映するHbA1cの数値も正確な診断や治療効果の判断には不可欠です。
また、糖尿病予備群とされる境界型の場合も、動脈硬化疾患の発症リスクを上昇させることがわかっていますので、数年間の健康診断結果を見比べるなどによって糖尿病リスクを知ることも重要です。さらに内臓脂肪型肥満、高血圧や脂質異常症(高脂血症)といった他の生活習慣病が合併していると、数値がそれほど悪くなくても動脈硬化が進行しやすくなります。メタボリックシンドロームを指摘された場合もできるだけ早く受診してください。
空腹時の血糖値が126mg/dl以上、または食後血糖値が140mg/dl以上で糖尿病が疑われ、再検査でもこの数値を超えた場合に糖尿病と確定診断されます。初期や境界型が疑われる場合には、将来の糖尿病リスクが高いとされ、予防的な生活習慣の改善が有効です。
なお、糖尿病の治療を行っている間も、状態を正確に把握して治療効果を確かめるために定期的な検査が必要です。また、糖尿病と診断されたら、定期的に眼科医を受診して網膜などの状態を調べてもらう必要があります。
血糖値の平均的な動きを調べるHbA1c検査
血糖値は食事や運動などの影響を大きく受けて変動を繰り返します。そこで、空腹時の血糖値検査や経口ブドウ糖負荷試験など条件を変えた検査があり、複数回の検査を受けてはじめて診断されます。また、直前の食事や運動などの影響を受けずに過去1~2か月の平均的な血糖値を調べることができるHbA1c(ヘモグロビンA1c)も診断や治療効果の確認には有効な検査です。
治療
糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病に大きく分けられ、ほとんどを生活習慣の関与によって発症する2型糖尿病が占めています。
1型糖尿病
インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊れて、インスリンがほとんど分泌できなくなる疾患です。インスリンを自己注射する治療が不可欠です。速効型インスリンと持続型インスリンがあって、患者様の状態によって組み合わせて処方します。また、自己血糖測定を行って正確な血糖コントロールを行うこともあります。
2型糖尿病
肥満や生活習慣などによって発症・進行します。インスリンが出にくくなる、またはインスリンの十分な効果を得られなくなって発症します。基本的に食事療法と運動療法を行います。減量には、単なるカロリー制限ではなく、栄養バランスのとれた内容を心がけることが重要です。運動の習慣化は、血糖値を下げる効果も期待できますし、筋肉が強化されて基礎代謝が上がり、インスリンの効果も高くなります。食事療法や運動療法は続けることが重要ですから、軽い有酸素運動を習慣的に続けてください。なお、合併している疾患や体重、膝や足腰などの状態によっては過度な運動による悪影響が及ぶ可能性もありますので、必ず医師と相談してから行うようにしましょう。
こうした食事療法と運動療法では十分な改善が得られない場合には薬物療法も併用します。薬には作用や効果の異なるものも多く、状態だけでなく服用できるタイミングなどライフスタイルに合わせた処方も可能です。当院では患者様と十分ご相談して治療方針を決めていますので、なんでもご質問ください。